こんにちは、シンです。
昨日の記事で実視界、見かけ視界が双眼鏡選びでは大切なポイントとして書きました。今回は見かけ視界の計算方法について調べてみました (カタログスペックには書かれているのでわざわざ計算する必要はありませんけどね)。
今の規格は計算がちょっと難しい
実視界、見かけ視界について調べたらニコンのサイトに行きついたのですが、そこにはこのように書かれていました。
旧JIS規格(JIS B7121:1993)
見掛け視界=実視界×倍率(この計算式では、見掛け視界65°以上を広視界双眼鏡と呼びます。)
Sport Optics Guide - 双眼鏡の基礎知識・視界 Nikon
これならば実視界8.2°、倍率8倍のOM SYSTEM 8x40Sの見かけ視界は、
8.2° × 8 = 65.6°
と簡単に計算できます。しかしカタログ値は59.7°と6°近い差が生まれています。そう、現在はこの旧JIS規格ではなく、以下のISO規格(14132-1:2002)および望遠鏡新JIS規格(特性 JIS B7121:2007,用語 JIS B7157:2003)が一般的です。
ISO規格(14132-1:2002)および望遠鏡新JIS規格(特性 JIS B7121:2007,用語 JIS B7157:2003)
tan ω' = Γ x tan ω
見掛け視界:2ω' 実視界:2ω 倍率:Γ
(この計算式では、見掛け視界60°以上を広視界双眼鏡と呼びます。)Sport Optics Guide - 双眼鏡の基礎知識・視界 Nikon
急に難しくなりました。でもとりあえず値を代入したら解けるかな?
実視界:2ω = 8.2° → ω = 4.1°
なので、
tan ω' = 8 × tan(4.1) = 8 × 0.07168... = 0.5734...
tanω' = 0.5734...になる角度は29.83...°、見かけ視界は 2ω' ですから、
2 × 29.83...° ≒ 59.7°
が導き出されました。
こういう計算をするときに有効桁数が気になります。そもそも倍率8倍は7.5倍-8.5倍までの範囲になり、見かけ視界も56.5°-62.7°の範囲になります。「8倍」の有効桁数は1桁なので見かけ視界も「60°」とザックリ表すのが数学的な正解、なはず。
ただ世界をリードしてきた日本の光学機器メーカーが7.5-8.5倍のガバガバ精度のものを作るはずがない、見かけ視界59.7°と公表するからには倍率8.00倍、実視界8.20°、これくらい精密に作られている、と信じましょう。
アークタンジェントの登場
さて、この計算においてニコンのサイトではこのような計算式が書かれていました。
例えば、倍率8、実視界7.0度の双眼鏡の見掛け視界は、以下のようになります。
2ω’= 2 x tan-1 (Γ x tan ω)
= 2 x tan-1 (8 x tan 3.5°)
= 52.1°Sport Optics Guide - 双眼鏡の基礎知識・視界 Nikon
え?
Tan-1って何?そんなことさっきの定義の式に書いてあった?これって除算ではなくてべき乗のTan^-1?
2^-1 = 1/(2^1) = 1/2
これは知ってるけど、tan^-1 は 1/(tan^1) ってことなの??
Geminiさんに助けを求めたら、 Tan^-1は「アークタンジェント」のことで、tanの逆関数だよ、arctanとも書くよ。
・・・。
サッパリ分からん。
もっと分かりやすく教えてと言ったら、
「tan(45°) = 1 だよね?これは角度が分かっていて高さ (または底辺) を求めたい時に、高さ/底辺で求められる値。では高さと底辺は分かっているけど角度が分からない時、それがアークタンジェント。tan^-1(1) なら、高さ/底辺 = 1になる角度 (すなわち45°) を求めるってこと。」
これでようやく分かりました。計算の思考については高校数学でも習いますが、アークタンジェントという言葉自体は教わった記憶がありません。それもGeminiさんに聞いたら、アークタンジェントは理系大学で登場するものだから知らなくても大丈夫、安心してください、だって。
私の学生時代は教科書の巻末に三角関数の早見表がありましたが、今の高校数学もそうなのかな?まあ今はスマホで簡単に求められる時代です。でもアークタンジェントってどうやって計算すればいいのでしょう?調べてみたら案外簡単でした。
iPhoneの電卓機能でアークタンジェントを求める
今分かっているのは実視界:2ω = 8.2° (ω = 4.1)、倍率:Γ = 8倍です。まず普通にtan(4.1°) を求めてみます。
iPhoneの電卓を使います。普通の電卓では計算できないので右上の電卓マークをタップして、「f(x) 科学計算」を選択します。

もし左のほうに「Rad」とあったら「Deg」に切り替えます。RadはRadian (ラジアン)、DegはDegree (度) です。

DegをタップするとRadが消えました。

そうしたら「tan」をタップして「4.1」と入力。


tan(4.1) = 0.07168...となりました。これが電卓でのtan θ の求め方になります。
では見かけ視界を求めるためにこの値に双眼鏡の倍率をかけます。ここでは倍率8倍なので×8をします。

これで見かけ視界:2ω' の
tan ω' = 0.5734...
まで計算が進みました。ここからがアークタンジェントの計算方法で、角度がバッチリ求められます。
「2nd」というのがあるのでそれをタップします。そうすると「tan」が「tan^-1」に切り替わったはずです。

2nd → tan^-1 とタップします。そうするとtan^-1(0.5734...)になります。

これでイコールをタップすればtan ω' = 0.5734... のω' = 29.83...(°) が求められました。

見かけ視界は2ω' だったので、この値に2をかけます。

見かけ視界2ω' = 59.66... ≒ 59.7 でカタログスペック通りの値が導けました。
以上がスマホ電卓でのアークタンジェント計算方法でした。
日常生活?での活用方法
「こんな計算方法分かっても何の役に立つんだよ。」
ご指摘はごもっともで確かに知らなくても困らない、でも世の中全ての人が知らなくてもいい、だったら今の繁栄はなかったことでしょう。知らず知らず、でも確実に生活に溶け込むように役立っているのが数学ってもんです。と素人が言っても何の説得力もないのですが汗
でも、この計算が分かれば登山で役立つかもしれません。
Q.登山口からの山頂Bの仰角は何°?
- 登山口Aと山頂Bまでの直線距離は5,000m
- 登山口Aの標高は1,000m
- 山頂Bの標高は3,000m
こんなものは
(3000-1000) / 5000 = 0.4
そしてiPhoneの電卓で、
2nd → tan-1 → 0.4
と入力すれば「 21.8°」と、登山口から山頂までの平均斜度が求められます。地図の等高線が密集してるところは急登ですが角度ってよく分かりません。でもこの計算方法が分かればすぐに分かります。登山しない人にはだから何?ですが登山者にとっては目に鱗な計算方法、そう思ってくれるものと信じたい。
それでは皆さん、Have a nice day !