福井県年縞博物館 〜圧巻の7万年分の時間ものさし〜

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こんにちは、シンです。
今回紹介するのは福井県年縞博物館です。

年縞って何?

まず年縞とはなんぞ?ですよね。私もここを訪れるまで全く知りませんでした。年縞というのは簡単に言えば湖沼等で堆積物によってできる層のことです。春から夏にかけてはプランクトンの死骸や珪藻等が堆積することで黒っぽい層になり、秋から冬にかけては鉱物等の堆積により白っぽい層になります。この白黒1組が1年分です。

この層の中には花粉や火山灰といったものも蓄積されているので、過去の気候変動や植生、地震や火山噴火といったイベントを知る手がかりともなります。

年縞は「時間のものさし」

では年縞の何がすごいのか?

それは年縞によってより正確な年代を知ることができる、いわば「時間のものさし」として使えることです。ものの長さの単位はメートルでその基準となるのはメートル原器でした。今では「真空中を光が1秒の299,792,458分の1の時間に進む距離」と国際的に定義されています。想像もできない世界です。重さはもっと難解です。1kgを「プランク定数hを6.62607015×10のマイナス34乗ジュール・秒(Js)」と定めることで定義される、と本当に意味が分からない世界です。

年縞はそこまで正確ではないですが、それでもこの福井県の水月湖 (三方五湖) の年縞は4万年前でも誤差145年と非常に正確に測ることができ、「(過去に遡る) 時間原器」といっても過言ではないでしょう。ちなみにメートルやキログラムのように、世界標準の時間尺度はIntCal (イントカル) と言い、水月湖の年縞はこのIntCalに採用されています。

どうして年縞で何年前のものか分かるのか?

古いものの年代を調べるには放射性炭素年代測定といった方法で調べます。これは何かというと生物が死ぬと放射性炭素を取り込めなくなり、その後少しずつ放出されて減っていきます。放射性炭素の半減期は5730年なので、現在の放射性炭素量と発掘したもののに残っている放射性炭素量を測定することで何年前のものか分かる、という仕組みです。

しかし問題は大気中に存在する放射性炭素の濃度が一定ではない、ということです。濃度が高い年代もあれば低い年代もある。だから単純に測定しただけでは大きな誤差が生じます。

そこで年縞の出番です。

年縞に閉じ込められた葉に含まれる放射性炭素を測定して濃度の違いを校正することで、放射性炭素年代測定の精度を飛躍的に高められました。出土したものに含まれる放射性炭素量が、この放射性炭素量のデータセットのどのあたりと一致するかを調べれば、今から何年前のものかが分かります。正しく「時間のものさし」です。
どうです?年縞のすごさが分かってきました?

奇跡の湖・水月湖

そんな年縞ですが、どこでも採取可能かと言うと違います。せっかく堆積したのにかき乱されたらおしまいです。できる限り「動かない」ことが正確な年縞が入手できる条件となります。その条件に非常によく当てはまるのが三方五湖の「水月湖」だったということです。

湖底の堆積物をかき乱す要因としてあがるのが河川の流入です。大雨等で大量の水や土砂が流されてくることで湖底の堆積物がグチャグチャになります。その点水月湖には流入する河川がありません。

そして湖底をかき乱すもうひとつの要因が生物の存在。ガサガサとエサを探すことで湖底の層が崩れます。水月湖は水深が34mあり、湖底に酸素が届かないため、そのような生物が存在しません。

でも静かな環境が整っていれば良いかと言えばそれだけでは足りません。堆積していけばいずれ湖は消滅してしまいますから。しかし水月湖の東側には断層があって水口湖のある西側は沈み込む側で、その沈降速度の平均は1年で約1mm。年縞は1年0.7mmほどなので堆積の速度より沈降速度が上回り、水月湖は干上がりません。

このように奇跡的な条件が揃った水月湖だからこそ、非常に正確な年縞を得ることができたのです。

年縞博物館の中に入ってみる

大人¥500を払って入場。まずは1階のシアターで年縞についてのレクチャーを受けます。そして2階に上がると7年分45mの年縞のステンドグラスが展示されています。実物を見ると圧巻です。

上の写真の通り3列に配置されたサンプル同士の年代を揃えていき、連続した時間の流れとなっています。上下のサンプルを見比べるとなんとなく縞のパターンが似てます。

そして時折厚い層がでてきますが、その時は地震や火山の噴火で一時的に堆積物が増加した時です。下の写真は1年平均0.7mmの年縞において10cmくらいの幅があります。これは1586年の天正地震によるものです。この地震によって飛騨の帰雲城は埋没し、城主一族もろもろ行方不明となり、内ヶ島氏は滅亡しました。

そして下の写真は10209±17年前、ウルルン島の火山灰と書かれています。こんなに昔なのに±17年という表記に驚きます。

このように45mの年縞には7万年の歴史が詰まっています。7万年前というとホモ・サピエンスがアフリカ大陸から各地へ広がり始めるころ。つまりこの水月湖の年縞はほぼイコール人類史とも言えます。
そんな年縞も近年については化石燃料の使用や核実験により、測定できない状況にあるんだとか。悲しくもありますがこれも人類史。遠い先の未来の知的生命体が調べた時に、この年代では何があったんだ?と気付くことでしょう。そして核兵器を開発した人類は核兵器によって滅んだ、と。そうならないことを強く、強く願います。

年縞博物館は一見の価値あり

世界標準に認定されるすごいものが、こんなところにといっては失礼ですが、案外身近に存在していることに驚きました。これは一見の価値、十分にあります。そして世界の考古学ファンの中にはこの水月湖の年縞を見たい、と思っている人はいるはずです。それをたった¥500で見ることができるんですから日本人は恵まれています。
あまりに楽しかったので年縞博物館の解説書も買ってしまいました。

これを読むとさらに理解が深まります。そして見落としたところをもう一度見たい気持ちになりました。今度は三方五湖サイクリングも兼ねて見学に行けたらな、と思っています。
以上、福井県年縞博物館の紹介でした。
それでは皆さん、Have a nice day !