皆さんこんにちは、シンです。
キャンピングカーで前泊して、2泊3日の「立山・劔岳山行」記録の4回目、これが最終回です。
前回の記事、剱岳登頂からの続きです。
当日下山か延泊かで悩む
剱岳山頂に到達した時点で時刻は8時30分。
普段の生活であればこれから活動開始という時間帯ですが、この時はだいぶ出遅れた感がありました。
と言うのもここから劔沢キャンプ場までのコースタイムが3時間、テント撤収に30分、劔沢から室堂までが約3時間。
休憩なしで行動(できないですけど)して室堂到着が15時です。
最終のバスは16時30分なので、途中1時間休憩しても間に合う時間ではあります。
幸いもう1日休みを取ってあったので、間に合わなくても仕事に影響は出ません。
問題はどこでもう1泊するか、ってことです。
キャンピングカーで寝る
当初の予定ではこの日のうちに下山してキャンピングカーで車中泊。
これがもっともリーズナブルで疲労回復できる方法です。
そのためには何が何でも16時30分までに室堂に滑り込まなければいけません。
ホテル立山に宿泊する
室堂まで行ったけれどもバスに間に合わなかった場合、ホテル宿泊という手があります。
お風呂もあってふかふかベッド、フルコースのディナー。
思いがけず贅沢できるプランですが、宿泊費は¥25,000前後です。
そんなことしたら家の玄関閉ざされてしまいそうです。
劔沢キャンプ場で延泊する
当日下山を諦めてテントでもう1泊です。
時間的制約に余裕が生まれるので焦らず下山でき安全です。
その代わり決して寝心地がいいと言えないテント泊なので、上の2案よりも疲労回復はできません。
この3つの案、実質的にはホテル泊は除外して、当日下山で鞭打つか延泊か、の選択肢を考えながらの下山となりました。
下りこそ要注意
剱岳に限ったことではなく登山全体に言えることですが、山での怪我は登りよりも下りで起きることが多いです。
気の緩み、疲労、焦り。
こういった身体的、心理的要因がミスを誘発します。
特に剱岳のような難所がある場所ではミスが命取りになるので、より慎重に行動すべきです。
たまにいるんですよね、山でも「煽り」行為をする人が。
危険ですからやめましょう。
剱岳は難所では登りと下りでルートが分けられています。
一緒になると危険極まりないですから。
で登りにあったカニのたてばいは通らず、代わりにカニのよこばい、を通ります。
結局カニかよ、って。
上の写真の人がいるところでほぼ垂直の岩を横に移動します。
その姿が「カニが横に這っている」ということでしょう。
最初の一歩ですね、ポイントは。
後ろ向きで下りるので足先が見えにくいんです。
それで足が置ける場所はどこだ〜?となるわけです。
見つけるまでは不安でしょうがありません。
でも今回2回目で余裕があったからなのか、それほど労せず足が置けました。
こういうところを下る時は、体を岩から少し離して視界を確保する、ことが大切です。
そうすると見えなかった足の置き場が目視できるようになり、不安も軽減します。
その一歩をクリアできれば、あとは三点確保を守れば楽勝です。
でも落ちると死んでしまうので気をつけましょうね。
そのあとすぐに剱岳で唯一かけられているハシゴが現れます。
鎖場よりハシゴの方が安心して登り下りできます、でも慎重に。
ここを下って平蔵の頭を越える所まで緊張が続きます。
でもその後は安全か、というとそうでもありません。
このように肩幅程度の岩場を歩きますが、「鎖がない=危なくない」と錯覚しがちです。
こういうところが実は危険だったりします(実際危険なんですけどね)。
延泊を決めた一服劔
大抵の山では下りは消化試合のような感覚になりますが、剱岳ではそんな感情は生まれません。
シーズン終盤までデッドヒートが繰り広げられている、そんな感じです。
そのクライマックスが前劔ですかね。
前劔の下り、これがえげつない。
疲れた足にこの下りはこたえます。
上の写真の中央下の盛り上がりが一服劔、このカールの中央あたりに劔沢キャンプ場があります。
室堂に戻るには中央の稜線を越えていかねばなりません・・・
疲労困憊のこの体でこれから室堂まで向かう力は残っているのだろうか?
それを打ち砕いたのが一服劔の登り返し。
ここで心が折れました。
延泊しよう。
時刻は11時、まだ頑張れば間に合う時間ではありますがエネルギーが枯渇しまして。
足が前に出ないんですよね。
この状況で室堂に向かってもきっと別山乗越すら越えられないでしょう。
無理は禁物、延泊だ。
そう思ったら少し気が楽になり、剣山荘で昼食とビールを摂ることにしました。
こんな場所でもこういう食事がいただけることに感謝です。
延泊の備えも大切
延泊と言っても、実は相応の決意が必要です。
天候不順で飛行機が飛ばず、海外から出られないニュースがたまにあります。
あれはあれで大変なんでしょうけど、お金さえあれば基本食べ物に困りません。
でも山だと事情が異なります。
山小屋が近ければこのように食事が摂れます。
でも大量の延泊者が出れば、それを賄えるほどの食糧はきっとないです。
そして水の確保も重要です。
山で延泊する可能性も考えて、余分に食料を持っていくこと、水がどこで確保できるのか把握しておくこと、は大切です。
今回は食事2食分余分に持って行き、行動食も余裕を持たせてあったので大丈夫でした。
ただ時間を持て余すんですよね。
幸いラジオを持って行っていたので、FMとやまとKNBラジオに助けられました。
特にソロ登山だと誰とも話さないので、人の声が恋しくなります。
3日も話さないで下山すると、声が出しにくくなるのは私だけ?
今回モバイルバッテリーは10,000mAのものを持っていきましたが、不測の事態に備えるならば20,000mAも必要かも、と思いました。
なんせスマホで写真・動画撮影、行動ログの記録をしていて、電力消費しますからね。
雨風にさらされながら無事帰還
さて最終日ですが、スマホのバッテリー容量は残り40%です。
節約モードで行動していたので写真がほとんどありませんので、文章で。
まず0時に雨風の音で目が覚めました。
そう雨風です。
延泊せずに帰ればこんな目に会わずに済んだのに、と恨みつつも体力の限界だったので仕方ありません。
スマホの電源を入れて雨雲レーダーをチェック、2時にやみそうです。
こういう重要な情報を得るにもスマホは便利ですから、バッテリー問題は切実ですね。
予報通り2時には小雨になったので急いで撤収、レインウェアとレイングローブをつけてヘッドランプの灯りを頼りに室堂に向けて歩きます。
レイングルーブも持ってきて正解でした。
誰ともすれ違わない真っ暗闇の山道で雨に打たれながら歩く、これも経験ですね。
明るくなってきた頃に雷鳥沢キャンプ場に到着、ここまで来ると人の気配があるので安心できます。
途中目の前で飛び立つ雷鳥や、進路妨害するかのように親子(6〜7羽)で歩く雷鳥を見かけましたがカメラを向ける気力なし。
そして朝6時に無事室堂へ到着。
ここに来るまでは「着いたらコーラ飲もう!」って自分を奮い立たせていたのですが、着いた途端、
「さ、寒い!」
雨風に打たれて体温奪われていたんですね、とても炭酸どころじゃありません。
すぐダウンジャケットを羽織り、体を温めます。
でもダウンも雨と汗で濡れてしまい、十分に機能しません。
こういう時はやっぱりフリースですね。
8時の始発バスに乗り、ケーブルカーで立山駅へ帰還。
ここまで来ればもう大丈夫。
疲労困憊な時って食欲湧きません。
でもこれには反応して90°方向転換してお店に体が吸い寄せられます。
お店に入って「おにぎりあります?」とカスカスの声で注文。
おばちゃんが「今から握るね。」と。
作り置きのない、出来立てを提供してくれるお店でした。
受け取ったおにぎりはもちろん温かく、しかも重たいものでした。
2つで一合以上のご飯の量ですね。
中身は梅と昆布です。
疲れている時こそ、こういうシンプルなものを体は欲しますね。
小学生の頃運動会で食べたおにぎりと同じ味の、とても美味しいおにぎりでした。
以上、2泊3日の立山・剱岳山行記録でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは皆さん、Have a nice day !